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市場総括

【随時更新】2026年夏 日本人海外組の移籍市場を追う — ここまでの決定と見えてきた構図

カイ(運営者)公開 2026.07.25更新 2026.07.25読了 約7

ワールドカップイヤーの夏、移籍市場はいつも以上に騒がしい。そしてウインドーは8月末の閉幕まで、まだ開いている。本記事は移籍ウインドー閉幕まで、市場の動きに合わせて随時更新する定点観測だ。最終更新のタイミングは記事上部の更新日で確認してほしい。閉幕後には、この夏の全体を振り返る総まとめとして改稿する予定だ。

扱うのは、クラブや選手の公式発表で確定した「決定」だけ。噂と決定を明確に区別するルールは本サイトの他のページと共通で、個々の詳細は各選手ページの噂タイムラインと合わせて読んでもらえたらうれしい。

ここまでの決定 — リーグ別の動き

まず事実の整理から。本稿更新時点までの決定のうち、特に注目しているものをリーグ別に挙げる。

ラ・リーガは今夏の主役級が2件。バレンシアは19歳の佐藤龍之介をFC東京から完全移籍で迎えた。そしてレアル・ソシエダは、京都から期限付きで加入しBチームでスペイン2部31試合に出場した喜多壱也の買取オプションを行使し、2030年までの完全移籍に切り替えた。ラス・パルマスも宮代大聖の買取オプションを行使しており、期限付きでの実績を経た完全移籍が続いた。

ブンデスリーガは日本人の動きが最も濃い。1部復帰を決めたシャルケ04はデュッセルドルフから田中聡を完全移籍で獲得し、2030年までの長期契約を結んだ。フライブルクにはシント=トロイデンから山本理仁が、W杯メンバーの後藤啓介が、ともに完全移籍で加入。宇野禅斗は清水からボルシアMGへ完全移籍した。そして18歳の山本天翔はガンバ大阪からドルトムントへ期限付きで渡った。登録はセカンドチームながらすでにトップチームに帯同してデビュー戦でゴールを記録。買取オプション付きと報じられており、続報が最も楽しみな移籍のひとつだ。

リーグ・アンはル・アーヴルの2人。水多海斗が完全移籍、広島から中村草太が期限付きで加入し、瀬古歩夢と合わせて日本人トリオが誕生した。

ベルギーの目玉はシント=トロイデンの2人。鹿島から荒木遼太郎、セレッソ大阪から石渡ネルソンがともに完全移籍で加わった。ほかにもルーヴェンへの荻原拓也山田新(ともに期限付き)、アントワープへの安藤晃希(完全)、コルトレイクへの倍井謙(期限付き)など、今夏も流入は続いている。

海外からJリーグへの移籍でも注目の移籍が2人。約10年の欧州キャリアを歩んだ浅野拓磨がキャリアの原点・広島へ、レアル・マドリードの下部組織出身として長く注目された中井卓大がFC今治へ、それぞれ完全移籍した。ほかに明本考浩が町田へ。欧州の外では古橋亨梧がロサンゼルス・ギャラクシーへ渡っている(ドイツ2部では横田大祐福田師王のレンタル先への完全移籍、アペルカンプ真大のフュルト移籍、安部大晴のキール期限付き加入も)。

ここまでが「何が起きたか」。ここからは、この決定の束から見えてきた「構図」を読む。

構図1 — 「登竜門」を飛ばす移籍。直行の行き先の格が上がっている

日本人選手の海外挑戦の王道は、長く「Jリーグ→登竜門リーグ(ベルギーなど)→5大リーグ」という階段だった。今夏のデータには、この階段を飛ばす移籍がはっきり刻まれている。

佐藤龍之介はFC東京からラ・リーガのバレンシアへ、宇野禅斗は清水からブンデスリーガのボルシアMGへ。いずれも4大リーグのクラブへの直行の完全移籍だ。昨年の高井幸大(川崎フロンターレ→トッテナム)に続く流れであり、さらに中村草太も期限付きながら5大リーグのル・アーヴルへ直接渡った。

さらに山本天翔のドルトムント行きもこの文脈にある。登録こそセカンドチームだが、トップチームに帯同して結果を出し始めており、買取オプション付きと報じられる契約は、4大クラブが日本の10代を直接押さえに来る動きの一例だ。

件数はまだ少なく、「これが主流になった」と断定はできない。だが、登竜門を経ない4大直行が現実の選択肢として繰り返し起きていることは、決定データからそのまま言える。Jリーグでのパフォーマンスが、経由地なしでビッグリーグの評価対象になり始めている——今夏の市場が示す変化のひとつだ。

構図2 — 受け皿の多極化。「日本人を複数抱えるクラブ」が広がっている

かつて「日本人選手の集積地」といえばシント=トロイデンの代名詞だった。今夏の決定を名鑑の顔ぶれと重ねると、この構図が変わりつつあるのが分かる。

フライブルクは今夏だけで山本理仁、長田澪、後藤啓介の3人が加入し、鈴木唯人と合わせて4人体制になった。4大リーグのクラブに日本人カルテットが生まれたことになる。ル・アーヴルは水多海斗と中村草太を迎え、瀬古歩夢と合わせて3人。ホルシュタイン・キールは安部大晴が加わり関根大輝と2人。OHルーヴェンにも荻原拓也と山田新が同じ夏に2人加入した。そしてSTVVも石渡と荒木を加えて最大勢力であり続けている。

日本人選手の受け入れ実績があるクラブは、適応支援のノウハウが蓄積され、次の獲得のハードルが下がる。STVVが体現してきたこの好循環が、ベルギーの外——ドイツやフランスの1部クラブへ広がり始めている。「どのリーグに行くか」だけでなく「どのクラブに日本人の足場があるか」が、移籍先選びの地図になりつつある。

一方で、集積地は増えるだけではない。かつて古橋亨梧、旗手怜央前田大然岩田智輝らが同時に在籍し「日本人の拠点」だったセルティックは、古橋のMLS行きと山田新の期限付き移籍に続き、前田にはプレミア勢への移籍を容認する報道、旗手にも去就を巡る報道が続く。仮に2人が去れば日本人不在——数年前には考えにくかった光景が現実味を帯びる。ポルトガルも守田英正の契約満了により、名鑑上の所属はアロウカの福井太智ひとりになった。

そしてこの二つに共通するのは、近年の顔ぶれから5大リーグへのステップアップに至った例がまだ少ないことだ(セルティック発の古橋・岩田、ポルトガル発の藤本寛也の移籍先は、いずれもイングランド2部だった)。背景には、本人が望むタイミングで移籍がまとまらなかったケースの多さがありそうだ。実際、前田は過去のウインドーでもプレミアの複数クラブの関心が報じられながら移籍には至らず、本サイトの記録にも「前回は移籍が叶わなかった」経緯が残る。旗手もたびたび去就の報道が繰り返されてきた。活躍すればするほど引き留めは強くなる——日本人の集積地であることと、送り出しに積極的であることは、必ずしも一致しない。受け皿は「日本人が多いか」だけでなく「望んだときに次へ進めるか」でも選別され始めている——集積地の地図は固定ではなく、新陳代謝の中にある。

構図3 — 契約満了、それぞれの選択。冨安・守田、そして鎌田

今夏の市場でひときわ目を引くのが、契約満了でフリーとなった代表の中軸2人だ。冨安健洋はアヤックスとの短期契約を満了し、セリエAの複数クラブへの移籍が取り沙汰されている。守田英正もスポルティングとの契約を満了し、プレミアのクラブの関心が報じられる状況が続く。いずれも契約満了をキャリアの区切りとして、フリーの立場で次の挑戦先を選んでいる形だ。

鎌田大地は別の選択をした。クリスタル・パレスとの契約満了が間際に迫るなか、7月に1年の契約延長が公式発表され、残留が決まった。背景として大きいのは、世界最高峰と評されるプレミアの舞台に立ち続けられるという点だろう。クラブ会長が「多くの選択肢を断ってくれた」と明かしたとおり、選択肢のある中でのプレミア残留だった。契約満了は「退団」と同義ではなく、行き場を失うことでもない。延長して残るのか、フリーの立場を生かして新天地を選ぶのか——満了間際はキャリアの選択の局面であり、冨安・守田と鎌田はその選択のふた通りの形を示している。

もっとも、クラブの側から見れば景色は変わる。契約満了での退団は、クラブに移籍金をもたらさない。だからクラブは、満了が近づく主力に延長を提示するか、契約が残っているうちに移籍を成立させるかの判断を迫られることになる。鎌田の延長は、選手にとってのプレミア残留であると同時に、クラブにとっても戦力を手放さずに済む決着だった。フリーの仕組みとクラブ側の事情は、関連記事「『無所属(フリー)』とは何か」で詳しく解説している。

構図4 — プレミアの日本人が増えていく気配

そしてもうひとつ、今季の特徴になりそうなのがプレミアリーグだ。名鑑のプレミア勢は現在6人。三笘薫遠藤航、鎌田大地、田中碧に加え、期限付き移籍先からトッテナムへ戻った高井幸大、そしてコヴェントリーの昇格によりプレミアの舞台に立つ坂元達裕がいる。移籍だけでなく「戻る」「昇格する」という形でも、プレミアの日本人は増えている。

さらに噂の段階では、前田大然のイプスウィッチ移籍をセルティックが受け入れたとの報道、同じくイプスウィッチによる守田英正への関心が報じられており、実現すればプレミアの日本人はさらに厚くなる。ウインドー閉幕時点でこの数字がどうなっているか——本記事の定点観測の主要ウォッチポイントのひとつだ。

市場はまだ動く — 噂の現在地

ワールドカップという特大のショーケースを経て、大会で存在感を示した選手には各国クラブの関心が集中している。本稿更新時点でも、鈴木彩艶上田綺世、前田大然、佐野海舟らを巡る移籍報道が続く。また、ワールドカップ出場組でありながら所属クラブが2部で戦う選手の去就も注目だ。フランス2部のランスに所属する中村敬斗はクラブが移籍を容認したと報じられ、交渉の進展が連日伝えられている。クラブの2部降格が決まったヴォルフスブルクの塩貝健人の動向にも期待がかかる。これらはまだ「噂」の段階であり、決定とは明確に区別して記録している。最新の状況は各選手ページで確認してほしい。

ウインドーが閉まるまで、このリストは動き続ける。決定が増えるたび、この記事も更新していく。

更新履歴

  • 2026年7月25日 — 初版公開
  • 2026年7月25日 — 冨安健洋の去就に関する記述を最新の報道状況に合わせて更新
用語メモ

完全移籍 — 保有権ごとクラブ間を移る移籍。期限付き移籍(レンタル) — 保有元との契約を残したまま、期限を定めて他クラブでプレーする移籍。買取オプション — 期限付き移籍の契約に付く「完全移籍へ切り替える権利」。契約満了 — 契約期間の終了に伴いフリー(無所属)になること。いずれも詳しくは関連記事で解説する。

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